メインテナンスについて
虫歯の治療は穴のあいてしまった歯を詰めたり、かぶせたりすることが主で、そうすることで歯が完全に治ってしまったと考えてしまう方も多いかと思います。長い間、治療に通ってやっと冠が入った時はホッとされることでしょう。とりあえず治ったから、「また痛くなったら歯医者に行けばいいや・・・」というのが普通の感情だと思います。虫歯も治ったし歯石もひととおり除去したらもう大丈夫・・・・残念ながらそういうわけにはいきません。インプラントをしてきちんと骨とくっついて咬めるようになった・・・これでもう一生大丈夫・・・残念ながらそういうわけにもいきません。
歯の修復治療を行うと、穴のあいてしまった歯の形態が治りますから、いかにも治った・・・という感じがするのですが、実際には失われた歯質を何かで補っているだけで、本当の意味で元通りに治ったわけではありません。しかも、天然のきれいな歯が虫歯や歯周病になってしまったということは、その歯をとりまく環境が良くないということです。たった今きちんと治ったと思っているその歯は、プラークコントロールなど、環境の改善がなされなければ、治療が終わった後も常に再発（２次齲蝕、歯周病の進行）の危険にさらされ続けているのです。
歯科疾患は、基本的には一度治っても再発を繰り返す可能性が高い慢性疾患であり、歯の修復物は人工の臓器なのです。
お口の状態を健康に保つための基本は、ホームケアです。しかし、お家での患者さんだけの努力で完璧なプラークコントロールを維持するのはほとんと不可能に近いと思います。そこで我々歯科の専門家が、患者さんご自身だけではなかなか行き届かない部分をクリーニングしたり、問題の早期発見や健康のためのアドバイスを行うなど、患者さんをサポート（プロフェッショナルケア）させていただくことが、長期にお口の健康を保つためには大切だと考えています。
メインテナンスの内容
- 検診・・・虫歯の発生状況・かみ合わせ・歯周組織の状態などをチェック。１～２年に一度くらいは自覚症状がなくてもレントゲンでチェックすることをおすすめします。
- ブラッシング状況のチェックと改善のための指導・・・プロの歯科衛生士によるチェック・アドバイス。歯間ブラシやワンタフトブラシ、フロスなどの補助的な道具の使い方・選び方などについてもアドバイスさせて頂きます。
- プロフェッショナル・トゥース・クリーニング（ＰＴＣ）・・・プロの衛生士によるお口のすみずみにわたるクリーニング。口腔衛生状態の改善はもちろん、歯の着色などのクリーニングにより見た目もきれいになれます。
- 生活指導・・・食生活・態癖などお口の健康に悪い影響を与える生活習慣を避けるようにチェック・アドバイスを行います。
以前は歯医者さんの側も、メインテナンスの重要性に対する認識が十分ではなく、その必要性を患者さんに十分に説明してこなかったという問題もありました。そのため、治療が終わると患者さんは安心してまた何か痛みや詰め物がはずれるなどの具体的な問題が生じない限り、歯医者に行かないという方も多かったようです。そうすると、その度に何本か新しい虫歯ができており、（あるいは同じ歯の再治療が必要になり・・・）その都度、少しずつ歯が悪くなっていき１０年～２０年の長い期間がたつと咬み合わせが崩壊してしまうことになってしまう・・・とういう経過を辿っていたケースが非常に多かったのです。
現在ではどんなに良い治療（修復）をしても、メインテナンスをしなければ長期的にお口の健康を守ることは不可能だとわかってきました。できるだけきちんと精度の高い治療を行い、治療が終わった後はメインテナンスを行い、再発予防に努めることが、生涯、おいしく健康な食生活を送るための鍵なのです。